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リチウムイオン電池は海上輸送できるのか?輸送条件の基礎知識と注意点

作成者: セイノーロジックス株式会社|2023.03.31

なんとなく規制があると理解していても、具体的にどの観点で判断すればいいのかわかりにくいアイテムです。実は、一定の条件を満たせば一般貨物としての輸送が可能です。この記事では危険品であるリチウムイオン電池の基礎知識から、輸送を可能にする具体的な条件、船会社に提出する書類までわかりやすく解説します。記事を読み終えると、リチウムイオン電池を海上輸送する際の事前の確認と準備、ポイントを押さえる事ができます。

「リチウムイオン電池」海上輸送時の基本知識

リチウムイオン電池はスマートフォン、ノートパソコンなどの小型家電の電源として使われ、今や生活にかかせないものとなっています。しかし、海上輸送では危険物に該当し一般貨物と同じプロセスで船積みすることはできません。今後ますます、リチウムイオン電池を含む製品は増え、国内外での輸送はより重要になるでしょう。安全に輸送するため、様々な法律や規制で厳格に整備されています。

  • リチウムイオン電池(いわゆる乾電池形または単体で使えるもの=「単電池」(セル)
  • リチウムイオンバッテリー(同種の複数の単電池を組み合わせ、外部に保護回路や端子など装置が付いた状態=「組電池(バッテリー)」)

なぜ危険品に該当するのか

リチウムイオン電池は加熱や衝撃などにより発熱、発火する恐れがあります。輸送品の正しい情報を船会社へ伝え、適切に梱包・輸送をしなければなりません。過去には、リチウムイオン電池に起因する重大事故が発生しています。

単体・機器同梱・機器組込の違い

海上輸送する際、リチウムイオン電池の「状態」によって輸送要件やUN番号が異なります。「単体・機器同梱・機器組込」の違いは以下の通りです。

単体、機器同梱、機器組込

 危険品クラスと国連番号

「国際連合危険物輸送勧告」では、危険品を9つのクラスに分類しています。リチウムイオン電池はクラス9に該当します。

CLASS 1 火薬類
CLASS 2 高圧ガス
CLASS 3 引火性液体類
CLASS 4 可燃性物質類
CLASS 5 酸化性物質類
CLASS 6 毒物類
CLASS 7 放射性物質類
CLASS 8 腐食性物質
CLASS 9 その他の有害性物質

また、国連番号とは危険品に国連勧告が番号をつけ、物品の名称、危険性、取り扱い方をルール化したものです。「UN NO、UN番号」とも呼ばれています。
リチウムイオン電池を危険品として輸送する場合は、国連番号UN3480/UN3481が割り当てられます。

・UN3480 リチウムイオン電池単体


・UN3481 リチウムイオン電池機器組込、機器同梱


 

一般貨物として輸送できる条件

リチウムイオン電池は本来ならば危険品に該当しますが、国際海上危険物規定(IMDG-Code) 特別規定188の要件を満たし、国連勧告輸送試験であるUN38.3に合格していれば一般普通品輸送が可能です。

1.SP188の要件を満たすこと

SP188とはリチウムイオン電池を一般貨物として輸送できる特別要件です。
下記の規定をクリアしていれば危険物に該当しません。

ポイント

  • 単電池(セル)=20W以下であり、リチウム含有量が1g以下であること
  • 組電池(バッテリー)=100W以下であり、リチウム含有量が2g以下であること
  • 総質量(容器の質量を含む)が 30kg 以下であること。(機器同梱、機器組込除く)

特別規定 SP188

次に掲げる要件を満たすものは、危険物に該当しない。

(1)リチウム⾦属単電池⼜はリチウム合⾦単電池にあっては、リチウム含有量が 1g以   下 であり、リチウムイオン単電池にあっては、ワット時間が 20Wh 以下であること

(2)リチウム⾦属組電池⼜はリチウム合⾦組電池にあっては、総リチウム含有量が2g以下であり、リチウムイオン組電池にあっては、ワット時間が 100Wh 以下であること。この要件に該当するリチウムイオン電池(平成 21 年 1 ⽉ 1 ⽇前に製造されたものを除く)については、外装ケースにワット時間を表⽰すること。

(3)単電池及び組電池は、IMDGコード2.9.4.1、2.9.4.5、2.9.4.6(リチウム⾦属単電池と再充電可能なリチウムイオン単電池から構成され、外部から充電されるように設計されていないリチウム組電池を運送する場合に限る)及び 2.9.4.7 の規定に適合するものであること。

(4)単電池及び組電池(装置に組み込まれたものを除く)は、その単電池及び組電池を完全に密閉することができる内装容器に収納され、かつ、短絡しないように保護されていること。(これには、同⼀容器内での短絡を誘発する可能性のある電導性のあるものとの接触防⽌も含まれる)内装容器は強固な外装容器に収納されていること。

(5)装置に組み込まれている場合は、単電池及び組電池は損傷及び短絡から保護され、かつ、その装置は不慮の作動を防⽌する効果的な⼿段が備えられたものであること。(ただし、無線⾃動識別(FRID)装置、時計、感知器等、輸送中に意図的に作動されるものであって危険な発熱を引き起こすことのない装置を除く)電池が装置に組み込まれている場合には、その装置は、その容量及び意図される使⽤⽅法について適切な強度及び構造を有する適当な資材で製作された強固な外装容器に収納されていること。(電池が装置により同等の保護がなされている場合を除く)

(6)単電池及び組電池(装置に組み込まれている場合を除く)を容器に収納した状態で、1.2m の⾼さから落下させた場合に、運送の安全を損なうような損傷がなく、かつ、容器内のリチウム電池が接触するような移動及び漏えいがないこと。

(7)総質量(容器の質量を含む)が30kg以下であること。(装置に組み込まれたもの及び装置と共に包装されたものを除く)

(8)外装容器には、次の表⽰を⾒やすい箇所に付すこと。(ボタン形電池が組み込まれている装置⼜は部品を収納する容器及び単電池⼜は組電池が組み込まれた装置⼜は部品を収納する容器(1の荷送⼈につき、容器の数が2以下の場合に限る)であって、電池の総数が単電池にあっては4以下、組電池にあっては2以下のものを除く)オーバーパックに収納する場合には、外部から⾒やすい位置に次の表⽰及び第14条の2の2の規定によるオーバーパック表⽰が付されていること。

注1 危険物を収納する容器が⼩さい場合にあっては、表⽰の⼤きさを縦 7 センチメートル以上、横 10 センチメートル以上として差し⽀えない。
注2 下部の⽩地の*に「UN」の⽂字に続けて国連番号を記⼊すること。
注3 「リチウム含有量」とは、リチウム⾦属単電池⼜はリチウム合⾦単電池の陽極中に含まれるリチウムの質量をいう。リチウム⾦属電池及びリチウムイオン電池については、各輸送モード間でのこれらの電池の輸送を容易にするため及び異なる⾮常措置活動が適⽤されるために、別の品名が存在する。
注4. 線の太さは 0.5 センチメートル以上とすること

参考:「船舶による危険物の運送基準等を定める告示 別表第一備考 10 (2023 年 1 月 1 日施行分)」

2.国連勧告試験 UN38.3試験に合格していること

試験内容の目的は「輸送時の安全維持」です。リチウムイオン電池(バッテリー)を海上、航空、鉄道輸送する際、この試験に合格することが求められています。これはIMGD CODE 2.9.4.1の要件です。

IMDGコード:「国際海上危険物規程」は、国連危険物輸送勧告の基本的要件を採り入れて、危険物の容器、包装、積載方法、隔離、船積書類等を具体的に定めています。

輸送時の注意点

リチウムイオン電池を輸送する際、適切に梱包・ラベルを添付しないと、加熱や衝撃等により発熱・発火の恐れがあります。そのため、リチウムイオン電池の「状態」や「ワット数」により輸送要件が異なります。安全を確保するため、規定に従い適切に対応しましょう。

梱包の方法とラベルの添付

リチウムイオン電池はSP188とUN38.3の条件をクリアしていれば一般貨物として輸送は可能です。しかし梱包方法は厳格に決められ、完全に密閉できる容器に収納し短絡しないよう保護しなければなりません。さらに、強固な外装容器に入れることが必須となっています。

詳しくはSP188の項目(4)~(8)はリチウムイオン電池を輸送時の梱包とラベルの添付方法が記載されていますので必ず目を通しましょう。

ラベルは外装容器の目に見える適切な場所に貼付します。
適切なラベルが貼付されていないと、出荷ができない場合があります。

SP188を適用して海上輸送する際に必要なラベル

リチウムイオン電池のラベルは日本海事検定協会のホームページから購入できます。

梱包とラベル添付イメージ

※ラベルにUN3480またはUN3481と記載

外観からわかるように、危険物ラベルを添付し国連番号を明示しなければなりません。

船会社に提出する必要書類

リチウムイオン電池を輸送する際、下記3種類の書類が必要です。しかし、船会社により提出する書類は異なる可能性があります。あらかじめ、どのテストレポートが必要であるか確認し、認証機関や試験機関で評価試験を行い、正式な書類を取得しておきましょう。

1.英文SDS

SDS「安全データシート」(=Safety Data Sheet)は、化学物質の危険性情報を記した文書です。事業者が「化学物質及び化学物質を含んだ製品」を他の事業者へ提供する際に交付します。

②SP188テストレポート(LOI)
SP188の要件を満たしている旨を明記されたものです。

③国連勧告輸送試験(UN38.3)テストレポート
UN38.3試験をクリアしていることを証明するものです。

参考

https://www.nkkk.or.jp/transportation/qa/pdf/201901/qa02_4.pdf