海外拠点の一極集中を避け、国や地域を分散する経営戦略「ポストチャイナ」「チャイナ・プラスワン」は製造業を中心に広がっています。今回はポストチャイナ戦略で特に注目度の高いベトナムをご紹介します。
ポストチャイナで注目、空飛ぶ龍の国
2023年11月、オランダのルッテ首相はベトナムを「昇る龍の国、チャンスの国」と称し、国交樹立50年をお祝いしました。ベトナムは龍に縁の深い国です。神話においてはベトナム人の始祖は龍だともいわれています。首都ハノイの旧称タン・ロン(昇龍の意味)をはじめ、龍にちなんだ名称も数多くあり、国土も龍が空に昇るような形に見えます。
ベトナムは平均年齢31歳、識字率95.8%と、若い人材が経済発展を支えている、まさに昇る龍の勢いを持つ国と言えるでしょう。ジェトロ調査(※1)でも、経営上の問題点として「従業員の質」を挙げた進出日系企業の割合はASEANの中でシンガポールの次に少なく、ベトナムの勤勉で温厚な国柄がポストチャイナ候補として好感を得ているようです。
参考※1:ジェトロ「2020年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」
アパレルからクルマまで、生産拠点として注目されるベトナム
ベトナムに進出している日本企業は2373拠点(2022年10月時点、※2)です。キヤノン、パナソニック、ホンダ、トヨタ、富士通、日本電産、ブリヂストン、富士ゼロックス、マブチモーターなど、主にベトナム北部・首都ハノイを中心にIT産業・製造業が盛んに展開されています。
また韓国企業の進出も活発で、2009年から本格進出したサムスングループは、2022年に東南アジア最大規模の研究開発センターを開設しました。サムスンの大規模投資は投資家の関心も集め、株式市場ではベトナムの「新興国」への格上げ期待も高まっています。
一方、ホーチミン市を含むベトナム南部はアパレル産業が盛んです。製糸工場から縫製工場まで幅広い分野で、世界各国のファッションブランドを支えています。平均年齢の若いベトナムは生産だけでなく消費市場としても注目される存在で、2019年にユニクロをベトナム進出したファーストリテイリング会長の柳井正氏も、ベトナムの消費市場としてのポテンシャルを大きく評価しています。
参考※2:海外進出日系企業拠点数調査 - 外務省
新興国への格上げに向けて躍進するベトナム
2010年頃までは、電力供給不足による計画停電により、工場での生産をストップせざるを得ない状況も多くありましたが、2012年に東南アジア最大規模の水力発電所が完成してからは停電の回数も著しく減っています。
交通インフラも開発段階ではあるものの、高速道路や橋の建造が多く進められています。2023年には世界銀行がベトナムの交通インフラ整備強化のため大規模投資の検討を発表しています。
駐在員としてベトナムに住んでいる私も、体感として停電は以前よりもずっと減ったと感じます。また交通インフラ工事も進められていて、ベトナムは川が多い国なのであちらこちらで橋の建造をしている光景も見られ、まさに今、現在進行形で成長している国だと感じさせられます。しかし、道路事情はまだまだ発展途上でコンテナヤードに行く道はいつも渋滞しているので、それを見るたびに、ベトナム到着後の輸送スケジュールにはゆとりを持たせた方が良いと思わされます。
第3の都市ダナンから、東西経済回廊へ
近年は、ベトナム第3の商業都市ダナンの近郊にある工業団地にも注目が集まっています。ダナンは観光都市として治安が良く、またハノイとホーチミンの中間に位置する立地から、ベトナムの重要な交通ハブとしても知られています。
さらに、ベトナム国土の南北をつなぐ中間地点というだけではなく、インドシナ半島の4ヶ国(ベトナム・ラオス・タイ・ミャンマー)を東西に結ぶ経済開発「東西経済回廊」の東端でもあります。
日本食文化のベトナム進出も加速
日本企業の進出に伴いベトナムに滞在する日本人も増え、日本食文化も大いに親しまれるようになってきました。
特に目立つのは日本酒です。日本からの日本酒の国別輸出額について財務省貿易統計でも、ベトナムは9位、前年度比236%と大きく躍進していることが分かります。ハノイ市内で2023年3月に開催された、在ベトナム日本国大使館主催の日本酒輸出促進事業「SAKE WORLD 2023 in Hanoi」も大盛況でした。
ベトナム国内にある日本食レストランの店舗数は、ASEAN各国の中で1位。日本でもベトナムの麺料理、フォーが親しまれていますが、ベトナムでも日本のラーメンが人気で、現地では特に九州とんこつ系が親しまれています。
ベトナムでは若い世代を中心に品質の確かな日本製品・ヘルシーな日本食に好感を持つ人が多く、日本食ブームはこれからさらに加速すると思われます。
陽気でおおらかなベトナムとのビジネス
ベトナムは陽気で朗らかな方が多いです。また親日家が多く、日本の食文化やブランドへの好感度も高い国です。赴任後にコロナ渦となり現地でワクチン接種をした際には、代理店のメンバーが副反応に備えて私の自宅まで薬を届けてくれるなど、ひと手間を惜しまない親切な温かさを実感しました。
朗らかなお国柄が心地よい一方で、仕事に対してはルーズな面もあります。日本からの問い合わせにおいては「書類が届かない」「もう少し早く返信が欲しい」というご要望をいただくこともあります。日本流のビジネス感覚と、ベトナムのおおらかな感性の間には、文化面からくるギャップが存在しますが、日本人駐在員が現地で蓄積した信頼関係を基にきちんと背景を説明することで、友好的に速やかに対応していただけます。
例えば、本船が大幅に遅れて納期が迫っているお客様から「少しでも早く現地で貨物を引き取りたい」というご要望があったケースでは、日本人駐在員から代理店担当者にもこのご要望を伝え、代理店担当者から現場へも情報を共有しました。お客様にも状況を随時報告し、スムーズでタイムリーな連絡体制が功を奏して、予想していたよりもずっと早く貨物を引き取ることができました。
セイノーロジックスは、世界各国に派遣した日本人駐在員と現地代理店が連携することで、お客様のビジネスが滞らないよう現地でアンテナを張り、現地文化を踏まえたスムーズな手配を実現しています。
※ 最後部右側:ベトナム駐在員𠮷川(ベトナム代理店WR1の皆さんと)
日本人駐在員がベトナムでもきめ細やかに対応
セイノーロジックスでは、ベトナム現地代理店BRANCH OF INTERNATIONAL LOGISTICS CORPORATION– WR1に、2022年1月から日本人駐在員を配置しています。ベトナム現地の状況を確認する際には、日本流ビジネスを理解する日本人駐在員が、お客様の目の代わりとなり、タイムリーに確認・対応しています。
今後さらなる展望として、危険品混載やコールドチェーンなどサービスの幅を広げることも視野に入れ、日々ベトナム現地でのネットワーク構築を進めています。ベトナムへの輸送に関しては、ぜひともセイノーロジックスにお任せください。